NQN 2001年6月27日

西田

焦点 日銀政策を聞く(3)聖域なき日銀改革を・ヴェルナー氏



01/06/27 12:25

【NQN】リチャード・A・ヴェルナー上智大学専任講師、プロフィッ ト・リサーチ・センター・チーフエコノミスト 日銀が取るべき金融政 策は「信用創造」することだ。具体的には民間が保有する国債、社債、 コマーシャルペーパー(CP)、株式、不動産など、ありとあらゆる資 産を日銀が買い上げる。参加者の多い市場に資金を供給することが必要 だ。民間投資家は保有資産を日銀に売却することで現金を手にし、その 資金でさらに新たな資産を購入することができる。投資家のポートフォ リオの組み替えが確実に起こり、「お金」が経済に回り始める。

 現在、日本が陥っている不況の原因は「お金が足りないこと」だ。日 銀は国内に資金需要がないから、いくら資金を供給しても経済効果が出 づらいと主張するが、そうではない。視点を変えれば、日本政府こそ、 世界最大の資金需要を抱えていると見ることができる。政府が資金調達 のために国債を発行して民間からお金を吸い上げてしまっているから、 民間投資が減少している。日銀が民間に代わって政府に資金を貸し出せ ば、こうした事態を回避できる。また民間部門に目を向けても、大企業 に資金需要はないが、銀行から必要な資金を借り入れることのできない 中小企業は資金を必要としている。

 日銀は3月に量的金融緩和に踏み切ったが、大きな経済的効果は期待 できない。当座預金残高を5兆円程度にする現行の政策は、民間金融機 関が日銀に預けるお金を増やすだけだからだ。不況が続くこの10年間、 日銀の考えはまったく変わっていない。日銀は不況を利用して日本の経 済構造を変えたいと考えている。日銀は金利操作で金融を緩和している ように見せかけてきたが、実際には「信用創造量」を減らしてきた。

 日銀は民間に対して「構造改革」や「実績主義」の必要性を説いてき た。しかしそれらが本当に必要なのは日銀自身だ。政府は日銀に達成す べき課題を与え、達成できなければ、責任者に罰則を課すなどの断固と した措置をとるべきだ。小泉政権は「聖域なき構造改革」を主張してい るが、「日銀」という「聖域」の存在に気付いていない。日銀の政策行 動のあり方には改革の断行が必要だ。