日本経済新聞 日経QUICKニュース   2002年9月20日

株、日銀の株式取得構想の裏側――入札未達は相場変動の予兆?


 20日の東京株式市場で日経平均株価は反落。朝方から、「今夕開く経済財政諮問会議でも、新たなデフレ対策の中身は決まりそうにない」との見方が広がり、買い手控え気分が漂うなか証券ディーラーなどの手じまい売りが優勢となった。

 そんな市場に衝撃を与えたのが、後場寄り後の「新発10年物国債の入札が初めて『未達』となっ た」とのニュース。政府の経済政策に対する思惑から、投資家の間で景気への見方が揺れ始めてきた証拠とも考えられる。今週は、18日には債券先物中心限月が3年3カ月ぶりにストップ安を記録。債券相場は「異例」な値動きに見舞われており、現象面からは国債離れの兆候が見えている。日銀が株式の直接取得に踏み切ることを決断してから、金融市場全体が大きく揺らいでいる感がある。

 なぜ、日銀はこれまでからは考えられない株式買い取りにまで踏み込むに至ったのか。「金融シス テムが追いつめられていることへの危機感の表れ」といった解説が多いが、財務省の影がちらつくと の説がある。その根拠としてささやかれているのが、先週末13日に開かれた「ジャパン・プロジェク ト・ミーティング」と題する講演会での、黒田東彦財務官の発言だ。「国の資金調達手段は国債発行 だけとは限らない」として、銀行借り入れの可能性をほのめかしたという。日本経済や日銀研究など で知られるプロフィット・リサーチ・センターのチーフエコノミスト、リチャード・A・ヴェルナー 氏は、「財務省がマネーサプライの供給に直接関与する意向を示したことで、日銀は慌てたのではないか」と語る。中央銀行の協力が無くても、マネーの供給を増やせるためだ。

 きょうの株式市場で日経平均の下げ幅は一時200円を超えたが、大引けにかけては買い戻され、日銀が株式直接取得を表明した18日の終値水準をかろうじて維持した。日銀の決断が首の皮一枚残った形だ。今週は、日米首脳会談、日朝首脳会談、日銀の株式直接買い入れ、新発国債の入札未達と歴史的とも言える出来事に株式・金融市場は大きく揺れた。「大きな山が動く」かどうか、要人発言やイベントから目が離せない日々が当面続く。(永井洋一)